制御できない情報を把握する難しさ
全8回を予定している本コラム。今回は4回目となり折り返しとなりました。今回のテーマは、クリエイティブという文脈でのメディアについてです。ここでのメディアとは、「通信・伝達・表現などの手段」や「媒体」「媒介」とします。昨今の情報の多さは、ある意味、僕たちの思考停止を生み出している部分があります。情報が多い=明確な答えがあるという構図ではなく、むしろ答えを導き出すことが困難であるという実情です。すなわち、たくさんの答えがあり熟考せずに判断をすると、どれも最適解だと思えてしまい意思決定の迷いが生じるということです。これが思考停止のきっかけです。例えば、TicTokやりましょう!や生成AIやりましょう!といったトレンドのメディアやサービスを起用したクリエイティブの提案時には気をつけたいところです。マスやソーシャルと主戦場は変われど、本質は変わらないという視点があります。
自分自身をメディアと据える大前提の重要
少し大袈裟な見出しとなっていますが、昨今の生活様式ではインフルエンサーという言葉が一般化しているように「個人のメディア化」は明白ではないでしょうか。マーケティング、広告、PR、ブランディングをRIDEのクリエイティブと照らし合わせて考えてみても個人発信の影響力がキーとなっていると考えています。18年以上、様々なプロジェクトのクリエイティブを担当させて頂き、時には自分たちでビジネスを始めてみたりとさまざまな経験を積んできて分かったことでもあります。そのため、「媒体としてのメディア形態」というよりも「媒介としての情報がどうのように伝わるか?」を理解することがこれからは必要だと感じています。メディアの在り方が変わっていくという流れには、受け手よりも実は発信者の欲求を満たしやすくなっているという環境にも注目しています。スマートフォンしかり情報を提供するプラットフォームといったITサービスの貢献もあります。
横と横のつながりといった構造から考える
先日、ある打ち合わせで「マスマーケティングでは届けたいエンドユーザーにメッセージを届けにくくなった今、コンテンツホルダーの活動をファン同士のコミュニティを中心に設計し、コンテンツの価値を最大化させていくという考え方」が必要だという話を聞きました。今回のテーマである「これからのメディアの在り方」を考えるきっかけともなったこの打ち合わせでは、従来の縦の関係である「発信者 対 N数」だけではなく、「N数 対 N数」といった横の繋がりを設計する重要性を議論しました。個人と個人といったファン同士の繋がりではなくコミュニティを一緒に作りあげたり、何かクリエイティブがそこで発生するような関係性です。そこには、出所の見えない情報や顔の見えない仲間に自分の知っていることや好きなことを共有することの危機感を回避する意味合いもあります。
炎上という漠然とした不安から「発信者 対 N数」と、さらには「N数 対 N数」まで、みんなが安心して繋がる場所、すなわちサブスクのサロンのような形態が新しいメディアの形になるのではないかとイメージしています。
そうなると、ネットワークだけではなく仕事のプロフィットパスやプロダクトの売買など経済活動も生まれ、広告収入に頼る従来のメディアとは違ったエコシステムを伴ったメディアが生まれるとも考えています。